研究内容

 

卒業論文・修士論文リスト

1.微生物熱測定による食品微生物学および土壌微生物学への応用

 食品の腐敗過程や土壌微生物による炭素源の資化過程を熱測定することにより、発熱が終了する時間や増殖速度が最大に達する時間などから微生物の増殖がどの程度活発に進行しているかを把握することができます。塩化ナトリウムなど、食品の防腐効果や土壌微生物活性を抑制する効果のある物質の濃度の依存性を解析することで、腐敗や資化活性を抑制する濃度、最小生育阻止濃度などの値を評価することができます。この分野における多くの手法は微生物を培養しなければなりませんが、微生物熱測定法では培養する必要はなく、培養困難微生物の活性も評価することができ、食品微生物学や土壌微生物学への応用が期待されています。

 

塩共存下でのアサリの腐敗過程の熱測定
塩共存下での土壌の資化過程の熱測定

 

2.食品衛生検査用非破壊微生物活性計測システムの開発

 非破壊的立場の微生物活性計測法を基本技術として、食品製造・流通業界ならびに衛生検査を行う試験研究機関などに向けた食品の微生物検査システムを開発を行っています。食品中の微生物挙動を動的な立場で定量的に把握し、公定法(計数試験法)に欠けている微生物のダイナミックな情報を得るための「計量試験法」を確立することにより、食品の微生物汚染に対処する高度な技術として実用化することを目指しています。

 

試作機
試作機の内部

 

3.熱測定法による嫌気性菌の増殖過程の測定

 嫌気性菌は通常好気条件下では増殖することはできません。従って増殖過程を測定するためには嫌気条件を保ったままか、もしくは嫌気条件下で一部を取り出して菌体量を測定する必要があります。しかしこれには一般に煩雑な作業を必要とします。また、嫌気性菌の中には凝集する菌も存在し、一般的な光学密度(OD)を使って菌体量を見積もることは困難です。そこで微生物の発熱量を測定する微生物熱測定法を使って、様々な嫌気性菌の増殖過程を測定しています。

 

様々な植菌量に対すサーモグラムの変化

凝集特性を示す嫌気性菌のサーモグラム、ATP濃度、ODの関係


4.グルコアミラーゼのデンプン結合ドメインに関する研究

 デンプン分解酵素であるグルコアミラーゼは、触媒ドメインとデンプン結合ドメインの二つの部分から構成されています。触媒ドメインが「口や歯」に相当するとすれば、デンプン結合ドメインは「手」に相当します。手が食べ物をつかみ、口に運び、歯でかみ砕きます。デンプン結合ドメイン自体にデンプン分解能はありませんが、デンプン結合ドメインがあることで大変効率的に分解が進みます。またこのデンプン結合ドメインには、デンプンを「ほぐす」機能があるとも言われています。このデンプン結合ドメインは大変面白いことに、高温ではふつうのタンパク質と同じように変性しますが、温度を下げてやると、形状記憶合金のように、また元の構造を回復します。そのカギを握っているのは何か。そこで、このデンプン結合ドメインだけを(本体から切り離して)遺伝子工学的な方法で調製すると共に、様々なアミノ酸置換を行った変異型タンパク質を調製し、それらの熱変性や基質との結合を高感度熱量計で測定することにより、どのような要因でこのドメインが安定であるのか、基質を捕まえる機能はどの部分や構造にあるのか、を探っています。

 

グルコアミラーゼのデンプン結合ドメイン(SBD)
X線結晶構造解析による電子密度図

 

 

SBDのDSC曲線
SBDとβシクロデキストリンのITC測定と結合等温線

 

5.C.cellulovoransのゲノム解析とセルラーゼ複合体「セルロソーム」に関する研究

 近年、エネルギー問題が注目される中、食料と競合することなく、農作物の残渣に含まれるセルロール質を糖化してグルコースやキシロースのようなC6糖やC5糖を効率よく獲得することが重要視されています。本研究では、次世代シークエンサーによるClostridium cellulovoranの全ゲノム解析を行い、C. cellulovoransが生産する糖質分解酵素に注目し、遺伝子工学、分子生物学、物理化学的手法を用いて、分子・原子レベルで酵素の構造と機能に関する研究を行っています。

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Clostridium属のセルロソーム遺伝子クラスター
C. cellulovoransのセルロソームの模式図

 

6.アルギン酸分解酵素を用いた希少糖の生産

 日本の国土面積は世界第60位ですが、領海と排他的経済水域を合わせると世界第6位と日本は広大な海洋面積を持っており、海洋バイオマスの利活用が注目されています。全世界で1年間に生産される水生植物は約700万トンであり、その約70%を褐藻類が占めています。褐藻類を構成する生体分子の中で、アルギン酸の含量は最も多く、褐藻クロメの場合,その含量は、乾燥重量の約4分の1に達します。我々は東京農業大学と共同でいくつかのアルギン酸分解酵素を用いてアルギン酸を最小の構成糖である4-Deoxy-L-erythro-5-hexoseulose uronic acid(DEH)を効率よく生産する方法を開発しました。海藻由来の希少糖としてはDEHは初めての例であり、機能性食品や化粧品への添加物、医薬品や化成品の原料としての利用が期待されています。

 

 
アルギン酸リアーゼを用いたDEHの生産

 

7.β-アミラーゼの構造と機能に関する研究

 β-アミラーゼは、デンプンの非還元性末端からマルトース(麦芽糖)単位でα-1,4グリコシド結合を逐次分解するエキソ型の酵素であり、生成物はβ-アノマーのマルトースを生成する。β-アミラーゼはアミロースをほぼ分解することができるが、アミロペクチンを基質とした場合、α-1,6結合の手前で反応が止まりβ-リミットデキストリンが残る。加工デンプン工場では、α-アミラーゼでデンプンを液化糖にし、β-アミラーゼやプルラナーゼを作用させることによって、高濃度のマルトースシェロップ(水飴)を得ている。
  多くのアミラーゼがα-アミラーゼと一次構造や機能の上で類似性を持つのにたいし、β-アミラーゼはα-アミラーゼとそのような類似性がなく、アミラーゼの中で独自の位置を占めている。 近年、いくつかの植物および微生物由来のβ-アミラーゼの構造が明らかになったが、その触媒メカニズムは、グルコアミラーゼと同様に反転型(inverting)酵素であるが、まだ多くのことがわかっていない。そこでX線結晶構造解析および反応速度論的解析を駆使することでβ-アミラーゼの詳細な触媒メカニズムの解明を目的とし研究を行っています。

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β-アミラーゼと基質の複合体構造
β-アミラーゼのデンプン結合サイト